今回は十三機兵防衛圏の主人公の一人、東雲涼子の一生を追いながら本作のストーリー解説して行きます。
一見クールですが一途なハートを持った女子高生。面倒見がよく、お姉さん気質を見せる一面もあります。しかし一途な思いがほんの少しだけいきすぎてしまうこともあるお茶目な女の子。
そんな彼女が機兵に乗って戦い、未来を勝ち取るまでの軌跡を追っていきましょう。
※用語集の方も見ていただけるとより分かりやすいかと。
また、本編において明確に語られていない部分については私の憶測を交えてお話ししています。
ですので間違っている場合もあるかと思います。是非コメントにていろんな意見をいただけると嬉しいです。
多少、便宜的な説明をしている部分もありますが、その点はご了承ください。
YouTubeの方に、このページの内容を動画にしたものもございますので、よろしければそちらもぜひ!
それでは本編へ参りましょう。
2188年の東雲
遺伝子工学を研究していた博士。
2188年の地球ではナノマシンが普及しておりました。しかしその技術が危険な組織に流出し、ナノマシンの汚染が広がっていきます。そして人類の大半が死亡し、生き残っているのは宇宙船に避難した15人だけとなります。
ここで残った人類は箱舟計画を実行に移します。
箱舟計画とは人間の遺伝子情報を宇宙船に乗せて飛ばし、別の惑星でクローンを作り、人類を再生させる計画です。
ポッドの中で生まれたクローンは20年間、仮想空間で地球での生活を体験します。クローンの中にはナノマシンが埋め込まれ、それを通じて仮想空間を体験します。こうして地球人類の文化を学んだクローンたちが、その惑星で新たに種を存続させていくところまでが計画の全容です。
生き残った15人全員の遺伝子情報を載せ、箱舟は無事に飛び立ちました。東雲博士も何らかの形でこの計画に携わっていたと思われます。
その後、宇宙船に残されているエネルギーは僅かとなり、持ってあと3日というところになります。しかしここで、エネルギーの利用方法をめぐって意見が対立し、銃撃戦が起きてしまいます。
東雲と、彼女の恋人であった井田は逃げ出し、生き残りました。しかしそれ以外の人間は全員死亡し、とうとう人類は井田と東雲の二人だけになってしまいます。
東雲は最後のひとときを井田とゆっくり過ごし、二人静かに心中したいと思っていました。
しかし実は、井田は郷登蓮也によって送り込まれたスパイであり、計画関係者に近づくために東雲を利用していただけでした。井田は最後に東雲を冷たく突き放し、心中も当然拒否します。それに逆上した東雲は井田を殺害、人類最後の一人となりました。
東雲は最後の最後まで、騙し合い、殺し合う人間の醜さに絶望しました。そしてこの世界に人間は存在してはならないと考えます。
そして東雲は箱舟計画を失敗させるため、凶行に走ります。
それを説明する前に、箱舟計画について2つほど補足します。
1つ目はクローンたちが体験する仮想空間内の、居住区管理システム、通称ユニバーサルコントロールについてです。
居住区システム担当だったプログラマー沖野司は、怪獣ダイモスというSLGのシステムを流用してユニバーサルコントールを設計しました。怪獣ダイモスというゲームは、町や人々の生活を発展させていき、迫り来るダイモスと戦うゲームです。もちろん沖野はダイモスがやってこないように、戦闘システム関連のプログラムは組み込まずに設計しました。
2つ目は、箱舟計画のリセット機能についてです。
クローンたちに文化教育を施す過程で重大な問題が発生した場合、(たとえば施設に不具合が発生したり、十分に成長する前に15人が全て死亡してしまった場合など)自動的にリセットされるようになっています。リセットの際、15体のクローンは破棄され、再び作り直されます。
この2点を踏まえ、東雲博士は箱舟計画のプログラムの一部を書き換え、クローンに埋め込まれるナノマシンに、ダイモスコード、通称Dコードというプログラムを追加しました。
Dコードは本来現れないはずのダイモスの設計データを引き出し、工場に生産させ、街を襲撃させるプログラムです。
このダイモスはユニバーサルコントロールを攻撃し、強制的にリセット機能を作動させます。
これが繰り返されることで、クローンたちへの教育プログラムは永遠に完了しなくなり、新たな星で人類が繁栄することは無くなります。
東雲博士はDコードを紛れ込ませた後、人類最後の人間として、一人寂しく息を引き取ります。
現在の東雲
セクター2出身。2064年の咲良高校に通っていました。
ある日突然、涼子の暮らすセクター2にダイモスに侵攻してきます。そこを和泉、森村、井田たちに救出されました。
十郎たちのおかげで一時的にダイモスは却られましたが、本格的な侵攻はこれからです。
この出来事の後、涼子は自分のことを助けてくれた井田に一目惚れしてしまいます。
井田は表向き、咲良高校の教師として働きながら、ダイモスへの侵攻に備えて活動していました。
涼子は気持ちを抑えきれず、井田に思いを伝えました。しかしその思いには応えられないと、断られてしまいます。それでも諦められない涼子は、井田に認めてもらうため、井田の望むまま機兵に乗ってダイモスと戦うことを決意します。
幼馴染の関ヶ原瑛は、涼子がただ利用されていることに気づいていましたが、彼女は井田にゾッコンで全く取り合ってくれません。困ったもんですな。
本格侵攻が近づいてきたある日、涼子は井田に呼び出され、機兵の格納庫へと向かいます。
そこで、DD426というプログラムを自分の機兵にセットするように言われます。機兵は主人公たちの脳内のナノマシンとリンクしていますが、プログラムの欠陥により本来の力が出せていないそうです。DD426はこの欠陥を改善し機兵を強化するプログラムであり、これをこっそりセットして皆を驚かせようと涼子に説明します。しかし、すぐ後に分かることですが、これは真っ赤な嘘です。
DD426は記憶野に結びつくナノマシンを強制的に剥離させるウイルスプログラムです。剥がされるにつれ脳がダメージを受け、記憶障害を引き起こし、最悪の場合廃人になってしまいます。
井田と話した直後、瑛が現れて何を話していたのか聞かれます。しかし涼子は、君には関係ないと言ってはぐらかします。
瑛は幼い頃、親が留守がちでずっと一人でした。近所に住んでいた涼子は、そんな彼の面倒をよく見てあげていました。ちなみに年齢は涼子が一つ上です。瑛は涼子のことを姉のように慕っており、幸せになってほしいと望んでいます。
しかしそんな彼の言葉も涼子には届きません。
ここで涼子は、瑛に井田のことを認めてもらうため、機兵強化コードと言われたDD426を瑛の15番機兵にセットしてしまいました。
そしてついにこのセクター2への本格侵攻が開始されます。
この戦闘に参加したのは12番機に乗っている沖野、13番の和泉、14番の東雲、15番の関ヶ原です。他の機兵も出撃していますが、AIなどで操縦しています。
激しい戦いが続いていましたが、突如機兵が暴走し、操作を受け付けなくなってしまいます。暴走の原因は東雲がセットしたDD426です。これが15番機から拡散され、全ての機兵及びその搭乗者のナノマシンに感染してしまいます。
森村は彼らを脱出させるべく、全機兵を強制転移させます。しかし転移先の設定は間に合わず、各々バラバラのセクターに飛ばされてしました。
涼子の14番機が飛ばされたのはセクター4/1984年です。その時代の警察に保護され、事情聴取を受けます。涼子は正直に未来からやってきたことを告げますが、当然信じてもらえません。そこに井田が現れ、涼子を引き取ります。
井田はこの時代で特務機構という組織を率いており、どうやら警察よりも権力があるようです。涼子に対する警察の調査を中止させ、そのまま彼女を特務機構に迎え入れました。今後は井田の元で、井田のために動きます。
しかし涼子は先の戦いで感染したDD426の影響により、記憶が曖昧になっています。涼子は症状の進行が早く、すでに多くの記憶が失われています。具合の悪いことに、井田に言われて自分がDD426をセットしたことも忘れています。
涼子はDD426を混入させた犯人を追うことになります。
涼子は何らかの履歴を見て、虐殺事件を起こした凶悪犯、通称426がこのプログラムを作ったことを知りました。
そしてさらに、15番機からDD426が拡散されていたことから、関ヶ原が凶悪犯426だと確信します。
涼子は咲良高校の理科室で、瑛がゲートを操作している隙を見て、彼の銃を奪い取り、追い詰めます。
確かにDD426を作ったのは凶悪426で間違いありません。しかし先ほど述べた通り、それをセットしたのは瑛ではなく涼子自身です。
一触即発の雰囲気の二人、そこで突如転移ゲートが勝手に起動し、二人ともセクター3/2025年に転移してしまいました。
そしてこの時、理科室裏にいた緒方、如月、沢渡もこの転移事故に巻き込まれてしまいます。
涼子が目を覚ますとそこは廃墟でした。セクター3はすでにダイモスに攻撃され、この有様になっています。
涼子はここに426のアジトがあり、無理矢理連れてこられたと思っているようです。涼子はアジトに踏み込み再び瑛を追い詰めます。そのまま瑛を殺害しようとしましたが、瑛の銃は持ち主を撃てないように設定されていたため、引き金がロックされてしまいました。ステゴロで襲い掛かろうとしますが、突如激しい頭痛に襲われます。DD426の症状ですね。
涼子は少しだけ記憶が戻りかけ、瑛が幼馴染であること、凶悪犯などではないことも思い出しますが、完全には戻っていません。そしてそのまま気絶してしまいます。
目を覚ました涼子は再び瑛と対峙しますが、記憶が混濁しており、また瑛のことを426だと思っています。
銃を持っている瑛には敵わないため、ドロイドをけしかけて一旦逃走します。
そして地下の中枢コンピューター、通称ユニバーサルコントロールへと向かい、そこにある転移ゲートをロックして瑛をこのセクターに閉じ込めようとしました。
間一髪、ゲートをロックする直前に瑛が駆けつけ、止められます。そして再び瑛のことを思い出し、みんなでセクター4/1985年に戻ってきました。
後日、井田は留置所にいた鷹宮由貴を引っ張り出し、特務機構にスカウトします。正式に加入すれば涼子の後輩ということになりますね。
しかし涼子は牽制するような態度を取ります。嫉妬しているのかもしれませんね。
そして涼子は再び、426のアジトがあるセクター3で、瑛を見つけて捕まえようとしますが、ドロイドがやられてしまったため、一旦逃げようとします。
彼に必死に説得されますが、記憶は戻らず涼子は逃げてしまいます。しかし、かなり混乱しているようです。もしかしたら瑛が犯人ではないのかもしれないとどこかで思い始めているようですね。
後日、機兵格納庫にやってきた涼子。涼子と共に飛ばされてきた14番機兵が、無事に回収できたようです。
しかしウイルスによってシステムが犯されている上、426に機兵の制御を抑えられているようです。そして最悪の場合、涼子の代わりに薬師寺恵を14番機兵に乗せることになると森村は考えています。
しかし、涼子は断固反対。この14番機は井田が自分に選んでくれた、自分だけの機兵だと言って譲りません。大切な人にもらった機兵に、他の女を乗せるなんてとんでもないと思っているようですね。涼子の一途な思いは止まるところを知りません。
次は、井田に言われて、とあるデータユニットを探すことになります。
涼子は、南奈津乃がそのユニットを所持していることを突き止めました。元々ユニットは、瑛が持っていたものです。これで涼子は南奈津乃が瑛、つまり426の仲間であると考えました。
そして奈津乃のユニットを奪うべく、セクター3で待ち伏せします。
そしてそこに偶然やってきた奈津乃に銃を突きつけました。もちろん奈津乃が426の仲間なはずは無く、必死に抵抗しますが、涼子は奈津乃を撃ち、無事にユニットを回収しました。
セクター4にユニットを持ち帰ってきた涼子ですが、その中から2188年の記録を発見します。
その映像から、未来で自分が井田に裏切られること、自分が世界を滅ぼすDコードを仕組んだことを知ります。涼子にとってはかなりショッキングな事実が一気に2つも明らかになりましたね。これを見て今も、井田に騙されているのではないかと思い始めます。
少し話が逸れてしまいますが、この2188年の映像は未来のものではなく、過去のものです。冒頭の方舟計画のお話で気づいている方もいるかと思いますが、彼女たちのいるこの空間は仮想空間であり、方舟計画における地球文化体験の真っ最中です。今いる東雲涼子は、映像に映っている東雲博士のクローンです。この映像内での出来事は涼子には直接の関係はありません。長い時間を超えて、全く別の人生を歩んでいるのに、たまたま同じ人を好きになり、たまたま同じように騙されているだけです。なんとも不幸な少女です。
そして、そこを通りがかった鷹宮にこの一部始終を見られていました。
鷹宮は涼子の様子をとても心配してくれています。鷹宮といい瑛といい、こうしてみると涼子先輩も結構友人に恵まれている気がします。井田以外は。
涼子は鷹宮に、ユニットをどこかへ隠して、映像の内容も誰にも言わないでほしいと頼みます。
そして激しい頭痛に襲われ気絶してしまいます。
目を覚ますとそこは保健室でした。鷹宮が運んでくれたようです。
しかし涼子は、先ほどの出来事を丸々忘れてしまっていました。映像を見たこともユニットを隠すように頼んだこともです。
後日、機兵の格納庫に忍び込んだ鷹宮を待ち伏せます。
彼女のナノマシンのコードを調べた結果、最近頻繁にコードが書き足されているようです。森村たちは彼女を捕らえ、詳細に調べることで、最近になって頻繁に鷹宮に接触してしている人物が426であることを突き止めます。
そして彼らはとうとう本物の426を見つけます。
彼を追い詰め、重症を負わせましたが、結局逃げられてしまいました。
そして後日、ここ最近涼子は、セクター1にある井田の研究室に忍び込み、井田の目的について調べていました。おそらく、以前見た2188年の映像を思い出したのでしょう。
ここで井田の過去と、目的を知ることになります。
それを説明するためにループについてご説明いたします。
冒頭でお話しした通り方舟計画はダイモスによって何度もリセットされており、ループしています。しかし実はこの仮想空間にはセクター0という避難領域があります。その中に保存されたデータは世界がリセットされても維持されます。ここに人間の記憶データを保存しておけば、次の周回が始まったとき、保存当時の状態でAIとして再生されます。
この方法で井田はリセットを乗り越えてきています。
井田は前周回で、如月兎美と恋仲にありました。彼女と共に次の周回(つまり今の周回)に飛んでくるはずでしたが、セクター0への避難の際に事故が発生してしまいました。如月はデータの保存が不十分だったため、今周回で再生されることはありませんでした。
井田は保存された彼女の人格データを元に、キサラギと呼ばれるAIを作りましたが、彼は如月を生身の人間として復活させたいと思っています。
その方法は、次の周回で生まれてくるはずの、何も知らない如月兎美に、保存された記憶人格データを移植するというものです。
井田は終始そのために行動しています。
井田がセクター2での戦闘で、涼子を使ってDD426をばら撒いたのもこのためです。万が一にもダイモスに勝ってしまい、リセットが起こらなくなっては困るからですね。
この記録を見た涼子は、井田に好きな人がいるという事実に大きくショックを受けてしまいます。
後日、とある事故により網口に登録された20番機兵が勝手に起動してしまいました。(なぜ勝手に起動したのかは、網口編、薬師寺編にて)
そこへやってきた井田と涼子。井田は網口にとある脅しをかけます。(詳しくは網口編にて)
ここで涼子は網口が機兵搭乗者であること、そして彼の20番機兵は、DD426に感染しておらず、問題なく動かせることに目をつけます。
ちなみに20番機以降は第四世代型と呼ばれる機兵で、セクター2の戦闘の後に作られた最新型です。なので当然DD426には侵されていません。
その後井田は、キサラギが衛星軌道上にある司令船にいることを突き止めました。
キサラギはセクター2の戦闘で、16番機兵を操縦しており、強制転移によりその司令船に飛ばされました。そこからユニバーサルコントロールにアクセスして、主人公たちがこの世界から脱出できるように彼らを手助けしていました。
井田はキサラギの16番機にアクセスして止めるため、セクター3の中枢へ向かいます。
ゲートの操作には生体ID持った主人公たちの誰かが必要なため、鷹宮を連れていきました。
涼子はこれに気づき、自分も井田の元へ向かうため網口の所へ行きます。
そして彼と共に、20番機兵の転移機能を使って、セクター3に行きました。
2人は井田の元へ辿り着きましたが、鷹宮が人質に取られていました。
涼子は一旦は井田に従うフリをしましたが、隙をみてゲートを起動し井田と共にセクター4に転移します。
涼子は自分以外の女性に井田の気持ちがあることにずっと苦しんでいました。そしてそれがどうしても許せなくなり、なんと井田を殺害してしまいます。
しかしすぐにこの出来事も忘れてしまいます。
そして後日、食堂で会った鷹宮から、自分が井田を殺害したことを聞かされます。
そして、井田に利用されていたこと、井田に好きな人がいたことを再び思い出して苦しみます。
涼子の症状はかなり深刻になってきており、もう記憶が完全に無くなる寸前です。
また今度は理科室で森村、郷登からセクター2で15番機兵にDD426をセットした犯人が自分であることを告げられ、当時のことを思い出します。
実は森村はナノマシンで涼子の記憶の補強を試みていましたが、うまく行きませんでした。仕方なく涼子を自由に行動させ、記憶が安定するのを期待しました。しかし記憶が欠落していく涼子の認識は、現実から離れていくばかりで、これまたうまく行きません。ただ、機兵汚染解除のパスワードを知っているのは涼子だけであるため、それをなんとか思い出してくれと言われます。
涼子は自分のしたことの重大さにとてつもないショックを受けそのまま気絶してしまいます。
目を覚ますとそこは保健室で、森村や瑛もいました。
そして、この時点でとうとう涼子の記憶はほぼ完全に無くなってしまいました。
ただ瑛は、これでもう涼子が利用されたり苦しむことがなくなると思って、少しホッとしたような顔もしています。
涼子や瑛は機兵の操縦訓練を受けていた際、学習装置を使っていました。その装置には学習内容に関する記憶がバックアップされています。これを涼子にダウンロードすることで記憶を復元することはできましたが、それはほんの一部、しかも機兵を動かした時の記憶だけです。それ以外は何も覚えていないません。
これでもう機兵汚染を解除するパスワードを知る方法は完全に無くなってしまいました。
瑛はもう涼子を機兵に乗せたりしないといいましたが、涼子は井田に選んでもらった機兵は誰にも渡さないと言い、14番機で戦うことを決意します。
そしてとうとう最後のセクター4にもダイモスの侵攻が始まります。
涼子は大切な人からもらった14番機兵を起動し、最終戦に参加します。
崩壊編へ続く。